その1
乳房のケア・トラブル予防
初めての授乳で最初に起きやすいトラブルは、乳頭の痛みです。元気に生まれた赤ちゃんは、小さな可愛い口からは想像できないくらい飲む力が強く、しかも一生懸命に吸います。乳頭に痛みがあるようなら、傷ができているのかもしれません。授乳が苦痛にならないよう、トラブルの予防法と日頃のケア、注意点をお伝えします。
乳頭、乳輪の準備
乳頭、乳輪の奥に乳汁が溜まっていたり、硬くなったりしていると、赤ちゃんがくわえにくくなり、浅くくわえる等して痛みを感じることがあります。飲ませる前には、親指と人差し指でいろんな方向から乳頭、乳輪をつまむようにマッサージして柔らかくましょう。赤ちゃんが乳頭、乳輪をくわえてすぐに母乳が飲めるように、手で軽く搾乳して、母乳が出やすくしておくと飲みやすいでしょう。
向かい合わせに抱っこ
赤ちゃんの体がよじれないように、ママと赤ちゃん、お互いのおへそを向かい合わせで抱っこします。腕で赤ちゃんの体を引き寄せ、ピッタリと密着させましょう。乳房や乳頭の大きさや形、赤ちゃんのお口の形によって、抱きやすい方法には個人差がありますが、横抱き、交差抱き、わき抱き(フットボール抱き)はおすすめです。
乳頭を深くくわえてもらう
大きく口を開けてもらうには、赤ちゃんの唇に乳頭をツンツンとあてて刺激をします。赤ちゃんの頭ではなく、首の後ろ、背中の上の方を支えて、少しあごを上げるようにします。お口を大きく開けたタイミングで、乳頭、乳輪をできるだけ深くふくませます。この時、下唇を乳輪にあてて、上唇を後からかぶせるようなイメージです。くわえたら、あご、ほっぺは、乳房にくっつけます。赤ちゃんの唇が内側に巻き込まれている場合は、唇をそっと指で外側に出すようにします。口先だけで、乳頭を吸うとチュパチュパと音を立てたり、強い痛みを感じたりしますので、上手くくわえていないと思ったら、くわえ直しをしましょう。
赤ちゃんのお口から乳頭乳輪の外し方
赤ちゃんが乳頭、乳輪をくわえて一生懸命に吸っている時に、そのまま、赤ちゃんを離そうとすると、乳頭、乳輪が引っ張られて、痛みを感じたり、傷ができてしまったりします。赤ちゃんの口角からお母さんの綺麗に洗った指をお口の中に滑り込ませるようにして、空気穴をつくると、陰圧が取れて、外しやすくなります。痛みがある際に我慢して15分以上吸わせるのは、傷を深くしてしまう場合がありますので、注意しましょう。
定期的な母乳パットの交換
古い母乳が付着した母乳パットを使い続けると、菌が繁殖しやすいため、それが原因で感染性の乳腺炎を引き起こすことがあります。母乳パットは3、4時間おきくらいで替えるようにして清潔を保ちましょう。
締め付けないブラジャーの使用
妊娠中から乳腺が発達して、サイズアップします。締め付けず、リラックスして過ごせる、ノンワイヤーのブラジャーを使用するようにしましょう。また、一日に何回も授乳しますので、授乳しやすいものを選びましょう。
助産師に相談
なかなか乳頭や乳輪の痛みや傷がよくならない時は、授乳が苦痛になりストレスの原因にもなります。ひとりで悩まず、産婦人科の母乳外来や助産院、母乳相談室などの助産師に相談しましょう。
監修:記野絵美(助産師、看護師)
看護専門学校助産師学科卒業。総合病院、産婦人科クリニックで勤務後、公益社団法人桶谷式母乳育児推進協会桶谷式乳房管理士の資格を取得し、郡山里の母乳相談室桶谷式代表を務める。