その5
乳腺炎
母乳は、赤ちゃんにとっては消化への負担が少なく、必要な免疫が含まれているなどの良い面があります。ママにとっても産後の子宮の戻りを良くしたり、カロリーを消費するのでダイエット効果があったりします。さらに、乳癌や子宮体癌、卵巣癌、閉経後の骨粗鬆症の予防にもなると言われています。一方、乳腺炎になるリスクもあります。乳腺炎とはどんなものでしょう。回避するために大切なことや対処法をお伝えします。
乳腺炎とは
乳腺炎のほとんどは、赤ちゃんが飲み残した古い母乳が乳房の中で溜まることが原因です。乳頭に傷があると、傷から菌が入って炎症を起こすこともあります。乳腺炎の症状としては、発熱やしこり、痛み、赤み等を起こすだけでなく、関節痛や肩凝り、頭痛がでることもあります。
乳腺炎にならないようにするためには
乳房が張って痛くなるほど母乳を溜めないことが大切です。ミルクを足している場合は、ミルクを飲みすぎて、飲んでもらえない母乳が乳房に残ることで、乳腺炎になることがあります。赤ちゃんが飲むからといって、ミルクの足し過ぎも要注意です。また、水分摂取が少ないと、母乳のつまりを引き起こしやすくなるので、こまめな水分摂取が大切です。寝不足や疲労、生活のリズムが変化した時などは、乳腺炎を引き起こしやすくなります。産後は、決して無理をせず、家族に協力してもらったり、自治体や産後ケアのサービスを利用したりするなどして休息をとるようにしましょう。
乳腺炎になってしまったら
ママと赤ちゃんの授乳時の姿勢や、赤ちゃんが乳輪乳頭を深くくわえているかなどを再確認することがとても大切です。休息は取りつつも、授乳間隔をあけないように気をつけ、赤ちゃんの要求に合わせて授乳を続けましょう。赤ちゃんに上手く飲んでもらえない場合や乳房のしこりが小さくならない場合などは、手で搾ることもおすすめです。搾乳器は、乳腺炎の原因の腺を出すことが難しく、余計に乳房が張ってしまうことあります。日頃、赤ちゃんに飲んでもらっていると、手で搾乳する機会がないので、搾乳が難しいと思いますが、自分の乳房を知っておくうえでも、手で搾乳できるようにしておくことはおすすめです。24時間以内に症状がよくならない場合は、病院の母乳外来や助産院、母乳相談室などの助産師と一緒に授乳の姿勢や赤ちゃんの飲み方などの確認を行い、必要があればマッサージなどケアをしてもらいましょう。また、痛み止めや抗炎症剤、抗生物質を飲みながら、授乳を続けることができますので、医師や助産師に相談してください。乳腺炎は、授乳しているママに起こりうるリスクではありますが、回避できるトラブルです。日頃から乳腺炎には気をつけましょう。なってしまった時には我慢しないで早めに助産師に相談しましょう。
監修:記野絵美(助産師、看護師)
看護専門学校助産師学科卒業。総合病院、産婦人科クリニックで勤務後、公益社団法人桶谷式母乳育児推進協会桶谷式乳房管理士の資格を取得し、郡山里の母乳相談室桶谷式代表を務める。