その6
ミルク、混合について
赤ちゃんに栄養を届ける方法には、母乳のみ、母乳多めの混合、ミルク多めの混合、ミルクのみ、と様々なスタイルがあります。産後のママの身体と心の状況、赤ちゃんの体格や飲み方、家族の協力があるかないかなどの生活環境によって、母乳か混合かミルクかを選ぶことができます。赤ちゃんが産まれてすぐのうちは、3時間おきの授乳が必要になり、生活の多くの時間を授乳に費やすことにもなります。そのため、妊娠中から赤ちゃんの栄養のことを含めた育児や家事の役割分担などを家族で話しあい考えておきましょう。
母乳とミルクの違いは?
栄養について
母乳は、腸内細菌を整える要素や、免疫機能を補う要素が含まれています。ミルクは、ビタミンや鉄分などの栄養のバランスを補う要素が充分に含まれています。タンパク質の成分の違いにより、ミルクは腹持ちがよく長く寝ます。そのため、夜中起きないこともあるので、睡眠時間を確保しやすくなります。
哺乳の目安ついて
ミルクは、赤ちゃんがどれくらい飲んでいるかを哺乳瓶の目盛りで確認できます。母乳は、乳房の授乳前後の変化や赤ちゃんの飲み方、飲み終わりに口をパクパクさせて泣いてしまう様子があるか、満足そうな表情かなどで判断します。また、赤ちゃんの肌質や肉付き、おしっこやうんちが出ているかも気をつけてみてあげましょう。母乳の一回量を測ってどれくらい飲んでいるかを判断することもできますが、母乳を飲む量は毎回違うので、 1~2週間で、体重がどれだけ増えているか計測して、飲めているかの判断をすることが必要な場合があります。
準備について
ミルクを作るための作業や授乳後に哺乳瓶や乳首を洗って消毒が必要です。お出かけの際は、哺乳瓶、ミルク、お湯、または、液体ミルクを持ち歩きます。母乳は、赤ちゃんが欲しがったタイミングですぐ与えることができます。お出かけの際の持ち物は授乳ケープがあります。また、授乳室などを事前に確認しておくこともおすすめです。常に授乳クッションを使用した授乳をしている場合、使用しなくても授乳できるようにすることも考えておく必要があります。
コストについて
ミルク代はかかります。母乳はお金がかかりません。
役割分担について
ミルクは、誰でもあげることができるので、家族に預けやすくなり、ママでなくてはいけない、ということがなくなるため、身体的にも精神的にも負担が軽減しやすくなります。母乳は、ママにしかあげられないので、ママの身体と心に負担がかかるかもしれないことを家族や周りの人も理解しておきましょう。家族で授乳のことを含めた育児や家事の役割分担などを話し合い考えておきましょう。ママの体調が乳房の状態にも大きく影響するので、バランスのよい食事や水分をとること、ストレスを溜めないようにすることなどに気をつけましょう。
母乳、ミルク、量を増やすにはどうしたらいい?
母乳を増やしたい時、母乳多めの混合にしたい時
基本的な授乳は、母乳を飲ませて、それでも欲しがる様子がある時にミルクを足します。ミルクの吐き戻しが多い、ミルクを飲んで次の時間まで寝過ぎたり、早めに起きてしまう、その場合は、ミルク量を調整したほうがいいかもしれません。また、母乳の分泌が多い場合、授乳時間があいてしまうと、乳房が痛くなってしまうことがあるので、ミルクのあげすぎにも気をつけましょう。また、夜間に授乳をすると母乳の分泌が維持されやすいと言われています。母乳量を増やしたい場合は、赤ちゃんの欲しがるタイミングで授乳しましょう。哺乳瓶に慣らしておきたい場合は、お風呂上がりや眠気がある際、哺乳瓶を使うことで、嫌がらずに飲めることもあります。
完全ミルクにしたい時、ミルク多めの混合にしたい時
赤ちゃんは可愛いけれど母乳をあげるのが辛い、乳腺炎など乳房のトラブルが続いている、上の子の授乳で辛い思いをした、乳房が痛い、夜間の授乳がつらい、仕事復帰を控えている、次の子の妊娠を考えている、など、ママの身体や心、生活スタイルやライフステージなどの様々な理由で、ママ以外の誰でも赤ちゃんに授乳できる状況にしたい場合もあります。ミルクを多くしたい、完全ミルクにしたい、そんな時は、乳房の張りや痛みに気をつけながら、授乳回数を徐々に減らして、ミルク量や回数を少しずつ増やしていきます。母乳の分泌がいい状況で、急激に授乳回数を減らしてしまうと、乳房への負担がかかるので、乳腺炎をひき起こすことがあります。乳房の張りが強い時や痛い時は、授乳や搾乳をするようにして、乳腺炎に気をつけましょう。
また、母乳がつくられることを抑えるお薬もあります。母乳が分泌される前に飲むことで、効果が出やすいので、妊娠中や産後早めに産婦人科の先生や助産師に相談しましょう。
赤ちゃんにとって授乳は、身体を成長させる栄養をもらうだけでなく、心の成長も育む大切なコミュニケーションの時間です。笑顔で赤ちゃんと向き合えるように、楽しい時間が過ごせる選択をしてください。
また、母乳やミルクのことを含め、育児のことで迷ったり、悩んでしまったら、ひとりで悩まずに、家族に相談したり、産婦人科の医師や助産師、地域の助産師や助産院、母乳相談室に相談をしましょう。
監修:記野絵美(助産師、看護師)
看護専門学校助産師学科卒業。総合病院、産婦人科クリニックで勤務後、公益社団法人桶谷式母乳育児推進協会桶谷式乳房管理士の資格を取得し、郡山里の母乳相談室桶谷式代表を務める。